もやもや病では両側の内頚動脈が頭蓋内での末端部(中大脳動脈・前大脳動脈分岐部)付近で進行性に狭窄または閉塞して大脳への血流供給が不十分になり、脳底部の細い穿通動脈が代償的に発達して太くなっています(もやもや血管)。しかし、泣く・吹奏楽器を吹く・運動・熱い食べ物をフーフー冷ますなどの過呼吸を伴う行動により、脳血管が収縮して脳血流が不足し(脳虚血)、手足の脱力や言語障害などの症状をおこします。
この病気の発症年齢は小児期と40歳台にピークがあり、小児では殆どが前述の脳虚血症状で発症しますが、成人では脳虚血での発症と脳出血での発症とが半々です。脳出血は過剰な負荷のかかっている“もやもや血管”から出血するとされています。
無症状で経過することもありますが、症状が出現した場合には治療が必要となります。治療には薬物治療(抗血小板剤など)とバイパス手術があります。バイパス手術の目的は、低下している脳血流量を増加させて脳虚血発作を予防するとともに、“もやもや血管”にかかっている過剰な血行力学的負荷を軽減させて脳出血を起こしにくい環境を作ることにあります。
近年、もやもや病感受性遺伝子(RNF213遺伝子のp.R4810K多型)が発見され、今後の研究発展が期待されます。
右内頚動脈撮影:正面像(左)、側面像(右)
内頚動脈末端~中大脳動脈・前大脳動脈起始部の狭窄、モヤモヤ血管がみられる
浅側頭動脈―中大脳動脈吻合術
頭皮下の浅側頭動脈(白矢印)を中大脳動脈の枝(黄矢印)に吻合している(赤矢印: 吻合部)