当院では2019年に県内初となるサイバーナイフを導入し、頭蓋内病変を中心に定位放射線治療を行っています。 主に、頭部(頭蓋内)に発生する比較的小さい良・悪性腫瘍が対象となりますが、装置自体は体幹部(脊椎、肺、肝臓、前立腺など)の治療にも対応しています。
2020年4月の診療報酬改定に伴い、保険適応となる疾患が拡大されました。当院でも順次対応を進めていく予定です。
「サイバーナイフ」とは?
サイバーナイフ(ACCURAY社製)は、ロボットアームに軽量の小型直線加速器を搭載して、高線量を1mm未満の誤差で照射することができる放射線治療システムです。
独自の構造により、一般的な放射線治療装置(リニアック)と比べ多くの方向からピンポイントで照射でき、複雑な形状をした腫瘍でも高い照射精度により病変部周辺にある正常細胞や視神経など重要な組織への影響を最小限にとどめ、安全な治療が実現できます。
また、治療中に患者さんが動いてしまっても、自動的に照射点を補正、追尾、あるいは照射を中断するなど何重もの安全対策が施されています。
サイバーナイフ治療のメリット
1.誤差を最小にするピンポイント治療
治療中の体(もしくは腫瘍)の動きを自動で追尾、補正することで、誤差を最小限に抑えることが可能です。
2.腫瘍に強く、正常組織にやさしい治療
多くの方向の中から照射方向を選択することができるため、治療の自由度が高くなります。複雑な形状の腫瘍に対しても、標的周囲の正常組織の線量を低く抑えながら、標的に高い線量を投入することができます。
3.治療期間の短縮
1回当たりの線量を多くすることで、一般的な放射線治療と比べ、治療期間を短くすることができます。
4.痛みのない、楽な治療
治療に使われるのはエックス線です。手術と異なり麻酔も不要で、体に傷をつけることなく治療が可能です。高齢の患者さんでも治療が可能となっています。
治療の流れ
▶ 外来受診の予約 |
➤診療は完全予約制です。
➤サイバーナイフ治療をご希望の際は、主治医の先生とよくご相談いただき、診療情報提供書・画像を当院の地域医療連携室宛にお送りください。
➤脳神経外科と放射線治療科が共同で適応を判断し、受診日を決定しご連絡いたします。
※下記に該当する患者さんは、当院の診療体制の都合上、治療が難しい場合がありますのでご相談ください。
●治療室で一人で安静が保てない
●透析を受けている
●心臓ペースメーカー挿入後である
▶ 治 療 計 画 |
➤治療内容、予想される副作用などを説明し、同意をいただいたのち、治療計画に入ります。 | |
➤患者さんの治療中の動きを最小限に抑えるため、治療部位に応じた固定具を作成します。 | |
頭頸部専用マスク |
体幹部用固定具 |
➤CT・MRIなどの画像撮影を行い、病気の状態を確認します。 | |
頭頸部CT撮影の様子 | 体幹部CT撮影の様子 |
➤画像を治療計画専用のコンピューターに取り込み、どの方向からどの程度の照射を行うかを計算し、治療計画を作成します。 | |
➤実際の治療が始まる前には物理検証(計算された通りに放射線が当たっているかの確認作業)を行っています。 |
▶ 治 療 |
➤作成された治療計画に基づいて、治療を行います。
➤治療期間は腫瘍の種類や数によりますが、1泊2日~2週間程度になります。1回の治療時間は20~30分程度です。
➤頭蓋内の治療は原則として入院で行っていますが、外来通院で可能な場合もありますのでご相談ください。
治療中はモニターでスタッフが中の様子を確認しています
▶ 治 療 後 |
➤治療中~終了後の生活上の制限は少なく、ほとんど通常の生活を送ることができます。
➤当院もしくは紹介元の病院で定期的に経過観察を行います。(特に良性腫瘍では)治療後の変化が確認できるまでに年単位で時間がかかる場合があります。
治療後の経過(一例)
乳癌多発脳転移
治療状況
【2019年4月~2024年6月】
疾患名 | 件数(%) | 疾患名 | 件数(%) |
転移性脳腫瘍 | 152(39.0) | SFT/HPC | 14(3.6) |
髄膜腫 | 69(17.7) | 下垂体腺腫 | 12(3.1) |
脳動静脈奇形 | 53(13.6) | 三叉神経痛 | 1(0.3) |
聴神経腫瘍 | 22(5.7) | その他 | 19(4.9) |
頸部 | |||
頸部リンパ節転移 | 6(1.5) | 頸部転移※ | 3(0.8) |
体幹部 | |||
原発性肺癌※ | 12(3.1) | 縦隔リンパ節転移※ | 5(1.3) |
オリゴ転移 | 10(2.6) | 転移性肺腫瘍 | 3(0.8) |
脊椎転移 | 5(1.3) | その他※ | 3(0.8) |
合 計 | 389名、324件 |
※姑息、緩和照射含む
治療の対象(保険適用)となる疾患
頭蓋内疾患
□良性腫瘍(髄膜腫、下垂体腺腫、聴神経腫瘍など)
□悪性腫瘍(転移性脳腫瘍、悪性リンパ腫など)
□脳動静脈奇形
脊髄疾患
□脊髄動静脈奇形
頭頸部疾患
□耳鼻科、口腔外科、眼科領域の腫瘍
体幹部疾患
□原発性肺癌・転移性肺癌(数・大きさに制約あり)
□直径5㎝以下の転移性脊椎腫瘍
□5個以内のオリゴ転移 ※オリゴ:少数の意味
※その他疾患の治療については、お問い合わせください。
治療費について
当科で行うサイバーナイフ治療は、原則保険診療です。健康保険の負担割合によって異なりますが、3割負担の場合、治療費用は約19万円(入院・食事代は別途)となります。
なお、高額療養費制度の適用となりますので事前に手続きすることで、医療費の支払いは所得に応じた上限額に軽減することができます。
詳しくは、医事課へお問い合わせください。
品質管理について
高精度放射線治療を安全に行うためには、装置の品質を厳密に管理し、正確な線量が正確な位置に照射されていることを保証することが極めて重要です。当院では経験豊富な医学物理士と診療放射線技師が協働してサイバーナイフの品質管理を行っております。当院のサイバーナイフの線量精度は第三者機関の評価により、厳密に管理されていることが証明されています。
その他
治療中は患者様の好みに合わせた音楽を流せるようになっています。お好きなCDをお持ちいただき、流すことも可能です。
お問い合わせ
新潟脳外科病院 地域医療連携室
☎025-231-5112(直通) 025-231-5111(代表)
fax025-231-5130